明けの明星を探る

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明けの明星を見ながら拝むのが求聞持法の拝み方だそうです。奥之院の岩屋から明けの明星が見えるかどうかが大きな問題になります。岩屋は東方に開いています。明けの明星がどのあたりにどのように見えるのか、弘法寺で体験する予定ですが、体験する前に天文ソフト(iStars)で時間や方角を調べてみました。

気がついたのは明けの明星の出る方角です。『四国遍路の寺』で五来氏は「明けの明星は東南の方角から出ます」と述べられていますが、2017年までのデータによると、明けの明星の出る方位角は60度から120度までで、東を中心にして東北東から東南東あたりになります。明けの明星は少しずつ南へ傾きながら上ってゆくようですが、夜明けまでに「南東」まで傾くことはないと考えられます。したがって、求聞持法に関係する岩窟の場合、明けの明星は「南東から」ではなく「東から」出るものとして探索する必要があります。

関連するページ: 『四国の行場めぐり > 太龍寺 御厨人窟・一夜建立窟

さらに、楽しみを増幅させてくれるのは「二十三夜の月」です。下表のように、深夜から夜明け前まで「二十三夜の月」と「明けの明星」を体感できる日があります。明けの明星については、2012年は7月初旬から正月頃まで、2014年は2月中旬から9月初旬まで、2015年は9月初旬から翌年の4月初旬まで、2017年は4月初旬から11月中旬までが当面の期間になります。







<追補 2019年8月31日>
2020年の「二十三夜の月」前後の「明けの明星」です。室戸岬で体験した「明けの明星」では、薄明りの中がふさわしいと感じましたが、表では薄明までを条件にしました。天文学に詳しくないので iStarsの見方が誤っているかもしれません。弘法寺奥之院の緯度経度を訂正しました。


下図は弘法寺の奥之院の岩屋の見取図に、天文ソフトから導いた「明けの明星」が出るであろう方角図を合体したものです。この図で見る限り、岩屋から明けの明星は問題なく見えるはずですが、杉の大木が前方にあるので視界を遮るかもしれません。また、現在は本堂が岩屋に連なって建立されているため、奥之院の岩屋から直接的に明けの明星を確認することはできません(本堂の正面の戸を開ける必要あり)。したがって、明けの明星の体感では、飛び岩、新しく設置された舞台、本堂前、本堂脇、奥之院の背後の愛宕神社、これらが不可能であれば星降る展望台を予定しています。 ※『野路山 伊音城 弘法寺』の見取図に管理人が着色(茶色が岩部分)、寸法記入(赤字)しました。



 明けの明星を体感する

二十三夜の月と明けの明星を体感すべく2012年8月10日(旧暦の6月23日)、弘法寺に出かけました。翌朝から天気が崩れるとの予報が出ていたため、眺望(方角)と深夜の状況の確認を主目的にしました。

下の画像は本堂正面からの眺望です(合成)。奥之院の岩屋は後方10メートルくらいのところに位置します。まわりの地形から推察すると 1,200年前の空海の修行時には前方の平地があったとしてもかなり狭く(舞台は最近の設置)、左手(北方面)の岩から右下(南方面)の巨岩群へと断崖状になっていたと考えられます。杉の大木は植林されたようなので北東から南方面には眺望を遮るものはなかったと都合よく考えることにします。



深夜、本堂前から東方を望む/現在は本堂右手に街灯があるため撮影や体感では条件がよくありません。新設された舞台まで移動すると杉の大木を避けることができます。

深夜11時半頃に二十三夜の月が、続いて午前2時過ぎに明けの明星が出始める予定でした。が、2時過ぎに雲が星空を覆い始め、3時過ぎには雨が落ちてきました。今回は二十三夜の月の体感に留まりました。


東方に現れた二十三夜の月 /「おん さんざんさく そわか」(勢至菩薩の真言:唱える場合)

当日は夜明けまで弘法寺に滞在しました。雨天にも関わらず早朝から参拝者(行者を含む)がみえられました。深夜から早朝へと今まで知らなかった弘法寺(野路山)に触れることができました。※ 弘法寺(標高800m弱)には日中のみお接待の方がおられます(冬期は3時半まで)。夕方からは無人になります。探索などは自己責任で。


早朝の弘法寺より雨に煙る瀬戸内海を望む

以下、探索の続きを予定しています。